こんにちは。ぼたもちです。
今日は【健診アプローチ】身体診察:下腿浮腫編 についてお話しします。
私は下腿浮腫を診察するようにしています。
健診の場でよく遭遇するのは、圧痕性の両側下腿浮腫ですが、片側性だったり、これむくみってとるの?と思わせるものだったり、浮腫があっても息苦しさを訴えないことなんてままあり、実際解釈に難渋することがよくあります。
下腿浮腫といえば、心・肝・腎・甲状腺・薬剤が代表的だと思いますが、それ以外の知識も含めて、今回アップデートしてみました。
*あくまで健診に役立ちそうな部分に絞ってます。
~結論~
確認項目
- 急性(3日以内)か慢性か
- 慢性なら心不全・甲状腺機能低下症状、静脈瘤/皮膚炎/色素沈着をチェック
- 静脈瘤あり→既往(DVT・担癌患者・麻痺)、長期間の不動状態をチェック
- 心:息苦しさ、頻脈、III音/ラ音/心雑音
- 甲状腺:non-pitting edema
急性発症→なる早で受診(片側:DVT・蜂窩織炎、両側:心不全・腎不全の急性増悪)
慢性発症→心不全・甲状腺機能低下症状、皮膚炎/色素沈着なし→経過観察
慢性発症→静脈瘤あり→既往、長期間の不動状態なし→経過観察
理由:
慢性経過であり、以前の健診データで腎・肝はフォローできているはず
フォローできていない心・甲状腺であれば症状が出ているはず
症状の乏しいDVTの可能性は残るが、慢性経過で皮膚炎/色素沈着があるはず
他の鑑別である、静脈還流不全や薬剤やリンパ浮腫は急ぎではない
~解説~
浮腫のアプローチはかなりややこしい。健診時に揃っているデータもまちまち
一番除外したいのはDVTだが健診で遭遇する頻度はかなり低い
しかも除外したいDVTは慢性経過のものや無症状のものもあり、非常にやっかい
片側性:リンパ浮腫・静脈還流不全・DVT
両側性:心・腎・肝・甲状腺・薬剤・静脈還流不全・DVT
*心:息苦しさ、頻脈、III音・ラ音・心雑音の聴取(、胸部X線での心拡大)
*腎:尿蛋白(、腎機能)
*肝:黄疸(、肝機能、肝炎ウイルスマーカー)
*甲状腺:non-pitting edema(、TSH・FT4)
*薬剤:Ca阻害剤(特にアムロジピン)、プレガバリン、三環系抗うつ薬、NSAIDs、ステロイド、ピルなど
*リンパ浮腫:浮腫側下肢の手術歴・外傷歴
経過は非常に重要
どうして浮腫に気づいたのか?
3日以内の急性発症
→片側性ならDVT、蜂窩織炎など
→両側性なら心不全や腎不全の増悪など
いつからあるかわからない慢性の下腿浮腫
→全身症状なければ50歳以上なら多くは静脈不全か薬剤性
一般的には解剖学的に左下腿浮腫が目立つ
10秒間前脛骨面を圧迫
40秒以内で戻ればfast edema
40秒以上かかればslow edema→心不全や静脈閉塞
非圧痕性→甲状腺機能異常、リンパ浮腫、脂肪浮腫
圧痕性浮腫(pitting edema)
非圧痕性浮腫(non-pitting edema)
DVT
痛みがなくても除外できない
WellsスコアでDVTらしさを評価する
疼痛・圧痛あり、長時間の同一姿勢の病歴あり、下肢全体の腫脹、腓腹部の左右差あり、担癌患者、麻痺患者、ギプス固定など
ホーマンズ徴候陽性(=足関節を背屈→腓腹部や膝窩部に疼痛+)
→DVT疑わしければD-dimer測定、エコー検査で診断をつける
蜂窩織炎
局所の発赤・熱感・疼痛あり→視触診で診断可能
血培実施は議論がわかれる
経口薬は第一世代セフェムが選択されること多い(黄ブ菌、化膿レンサ球菌多い)
静脈還流不全
片側性も両側性もある
女性に多い、加齢、50歳以上で最多
下肢の重だるさや疼痛をきたすことが多い
網目状・クモの巣状の下肢静脈瘤が見られる
症状が進行するとうっ滞性皮膚炎、色素沈着、下腿潰瘍などの静脈うっ滞症候群になる
エコー検査でDVTの有無について確認する(←これはかなり非現実的すぎる!)
保存的治療で症状改善することも多い
→塩分制限、減量、下肢挙上、運動、弾性ストッキング
保存的治療で改善しない&下肢静脈瘤進行例では手術適応(血管外科コンサルト)
利尿剤は選択肢の一つだが、脱水による腎前性腎不全のリスクがあるため、長期に使うのはNG
浮腫側下肢に手術歴・外傷歴があれば、静脈やリンパ系の還流障害が疑われる
心・腎・肝・甲状腺は血液検査、尿検査、レントゲン、心電図など一般的な検査でスクリーニングすることになる
心不全
息切れ、動悸などの自覚症状
頻脈
III音、ラ音、心雑音の聴取
胸部レントゲン
BNP測定、心エコー
腎疾患
尿蛋白+
BUN・Cr・eGFR
肝疾患
黄疸、肝腫大、腹水
*身体診察でわかるのは腹部膨満の原因が腹水かどうか(少量腹水の検出は困難)
肝炎ウイルスマーカー、エコー、CT
薬剤性
全身症状がない、中・高年者の両下腿浮腫
Ca阻害剤(特にアムロジピン)が多い
プレガバリン、三環系抗うつ薬、NSAIDs、ステロイド、ピルでも生じうる
甲状腺疾患(亢進も低下も)
非圧痕性浮腫(実は圧痕性も生じうる)
低アルブミン血症
アルブミンが2g/dL未満と顕著に低下しないと浮腫はきたさない
蛋白漏出性胃腸症
両下腿の浮腫+下痢をきたす
原因は炎症性腸疾患、心不全