臨床医を諦めた30代男のブログ

アルバイト医として生計を立ててます。不動産や株式投資も細々とやってます。

【健診アプローチ】身体診察:下腿浮腫編【急性発症→なる早で受診 慢性発症→心不全・甲状腺機能低下症状、皮膚炎/色素沈着なし→経過観察 慢性発症→静脈瘤あり→既往、長期間の不動状態なし→経過観察】

こんにちは。ぼたもちです。

 

今日は【健診アプローチ】身体診察:下腿浮腫編 についてお話しします。

 

私は下腿浮腫を診察するようにしています。

 

健診の場でよく遭遇するのは、圧痕性の両側下腿浮腫ですが、片側性だったり、これむくみってとるの?と思わせるものだったり、浮腫があっても息苦しさを訴えないことなんてままあり、実際解釈に難渋することがよくあります。

 

下腿浮腫といえば、心・肝・腎・甲状腺・薬剤が代表的だと思いますが、それ以外の知識も含めて、今回アップデートしてみました。

*あくまで健診に役立ちそうな部分に絞ってます。

 

~結論~

確認項目

  • 急性(3日以内)か慢性か
  • 慢性なら心不全・甲状腺機能低下症状、静脈瘤/皮膚炎/色素沈着をチェック
  • 静脈瘤あり→既往(DVT・担癌患者・麻痺)、長期間の不動状態をチェック
  • 心:息苦しさ、頻脈、III音/ラ音/心雑音
  • 甲状腺:non-pitting edema

 

急性発症→なる早で受診(片側:DVT・蜂窩織炎、両側:心不全・腎不全の急性増悪)

慢性発症→心不全・甲状腺機能低下症状、皮膚炎/色素沈着なし→経過観察

慢性発症→静脈瘤あり→既往、長期間の不動状態なし→経過観察

 

理由:

慢性経過であり、以前の健診データで腎・肝はフォローできているはず

フォローできていない心・甲状腺であれば症状が出ているはず

症状の乏しいDVTの可能性は残るが、慢性経過で皮膚炎/色素沈着があるはず

他の鑑別である、静脈還流不全や薬剤やリンパ浮腫は急ぎではない

 

~解説~

浮腫のアプローチはかなりややこしい。健診時に揃っているデータもまちまち

一番除外したいのはDVTだが健診で遭遇する頻度はかなり低い

しかも除外したいDVTは慢性経過のものや無症状のものもあり、非常にやっかい

 

片側性:リンパ浮腫・静脈還流不全・DVT

両側性:心・腎・肝・甲状腺・薬剤・静脈還流不全・DVT

*心:息苦しさ、頻脈、III音・ラ音・心雑音の聴取(、胸部X線での心拡大)

*腎:尿蛋白(、腎機能)

*肝:黄疸(、肝機能、肝炎ウイルスマーカー)

*甲状腺:non-pitting edema(、TSH・FT4)

*薬剤:Ca阻害剤(特にアムロジピン)、プレガバリン、三環系抗うつ薬、NSAIDs、ステロイド、ピルなど

*リンパ浮腫:浮腫側下肢の手術歴・外傷歴

 

 

経過は非常に重要

 

どうして浮腫に気づいたのか?

3日以内の急性発症

→片側性ならDVT、蜂窩織炎など

→両側性なら心不全や腎不全の増悪など

 

いつからあるかわからない慢性の下腿浮腫

→全身症状なければ50歳以上なら多くは静脈不全か薬剤性

 

一般的には解剖学的に左下腿浮腫が目立つ

 

10秒間前脛骨面を圧迫

40秒以内で戻ればfast edema

40秒以上かかればslow edema→心不全や静脈閉塞

非圧痕性→甲状腺機能異常、リンパ浮腫、脂肪浮腫

 

圧痕性浮腫(pitting edema)

非圧痕性浮腫(non-pitting edema)

www.youtube.com

 

DVT

痛みがなくても除外できない

WellsスコアでDVTらしさを評価する

疼痛・圧痛あり、長時間の同一姿勢の病歴あり、下肢全体の腫脹、腓腹部の左右差あり、担癌患者、麻痺患者、ギプス固定など

ホーマンズ徴候陽性(=足関節を背屈→腓腹部や膝窩部に疼痛+)

→DVT疑わしければD-dimer測定、エコー検査で診断をつける

 

蜂窩織炎

局所の発赤・熱感・疼痛あり→視触診で診断可能

https://medicalnote.jp/contents/200824-004-AD

血培実施は議論がわかれる

経口薬は第一世代セフェムが選択されること多い(黄ブ菌、化膿レンサ球菌多い)

 

静脈還流不全

片側性も両側性もある

女性に多い、加齢、50歳以上で最多

下肢の重だるさや疼痛をきたすことが多い

網目状・クモの巣状の下肢静脈瘤が見られる

症状が進行するとうっ滞性皮膚炎、色素沈着、下腿潰瘍などの静脈うっ滞症候群になる

エコー検査でDVTの有無について確認する(←これはかなり非現実的すぎる!)

保存的治療で症状改善することも多い

→塩分制限、減量、下肢挙上、運動、弾性ストッキング

保存的治療で改善しない&下肢静脈瘤進行例では手術適応(血管外科コンサルト)

利尿剤は選択肢の一つだが、脱水による腎前性腎不全のリスクがあるため、長期に使うのはNG

 

浮腫側下肢に手術歴・外傷歴があれば、静脈やリンパ系の還流障害が疑われる

 

心・腎・肝・甲状腺は血液検査、尿検査、レントゲン、心電図など一般的な検査でスクリーニングすることになる

 

心不全

息切れ、動悸などの自覚症状

頻脈

III音、ラ音、心雑音の聴取

胸部レントゲン

BNP測定、心エコー

 

腎疾患

尿蛋白+

BUN・Cr・eGFR

 

肝疾患

黄疸、肝腫大、腹水

*身体診察でわかるのは腹部膨満の原因が腹水かどうか(少量腹水の検出は困難)

肝炎ウイルスマーカー、エコー、CT

 

薬剤性

全身症状がない、中・高年者の両下腿浮腫

Ca阻害剤(特にアムロジピン)が多い

プレガバリン、三環系抗うつ薬、NSAIDs、ステロイド、ピルでも生じうる

 

甲状腺疾患(亢進も低下も)

非圧痕性浮腫(実は圧痕性も生じうる)

 

低アルブミン血症

アルブミンが2g/dL未満と顕著に低下しないと浮腫はきたさない

 

蛋白漏出性胃腸症

両下腿の浮腫+下痢をきたす

原因は炎症性腸疾患、心不全