【健診】無症状の低血圧患者への対応【結論:放っておいてよい】

こんにちは。ぼたもちです。
健診していると無症状で低血圧の患者さんってよくいます。
特に若年者に多いですが、中年女性でも普通にいらっしゃいます。
そんなときに、「このまま低血圧って放っておいていいのでしょうか?」と聞かれることがあります。
その時用のために知識を整理してみました。
~結論~
放っておいてよい
~解説~
症状の有無が重要で、症状がなければ放っておいて構いません。
症状があれば、下記の疾患を疑うことになりますが、鑑別多いですね・・

ちなみに低血圧が虚血性心疾患・脳梗塞を誘発するというエビデンスは確立されていません。
また「寝起きの悪さ」が低血圧と関連するという医学的なエビデンスはありません。
参考になれば幸いです🌈
【健診】コレステロールが高い方が長生きするのか?【結論:そんなことない】

こんばんは。ぼたもちです。
今日は「コレステロールが高い方が長生きするのか?」についてお話しします。
コレステロール関係が続きますね😊
よくYouTubeでやってますよね。
「コレステロールは下げるな!コレステロールが高い方が長生きする!」
みたいなアレです。
「血圧は下げるな!血圧が高い方が長生きする!」
と同じ理論です😂
さっそく結論です。
~結論~
~解説~
これが全てだと思ってます。

簡単にいうと
低コレステロールで、発がん性や脳出血のリスクが上がるという結果が報告されている
しかし多くは「見かけ上の関係」に過ぎないと結論づけられている
つまり低コレステロール血症が直接悪さをしているわけではなく、背景の何らかの理由が低コレステロール血症を介在して悪さをしているので、一見低コレステロール血症が悪者に見えるというお話しです。
低コレステロール血症→がん→死亡 ではなく
がん→低コレステロール→死亡
*スタチンによる発がん性は報告なし
低コレステロール→脳出血の危険因子 のエビデンスはなく、通常の治療では心配無用
仮に低コレステロール→脳出血の危険因子 が正しいとしても
血圧をコントロールできていれば、特に心配いらない
YouTubeの過激なサムネにつられないようにしましょう。
参考になれば幸いです🌈
【健診】小型化LDLコレステロールは超悪玉コレステロール【ただし現時点では積極的に測定する意義なし】

こんばんは。ぼたもちです。
今日は「小型化LDLコレステロールは超悪玉コレステロール」についてお話しします。
小型化LDLコレステロールとは、LDLコレステロールでも小さいものを指します。
またの名を
- 超悪玉コレステロール
- small dense LDL
- 小密度低比重リポ蛋白コレステロール
などと言います。
これ名前の通り超やっかいなんです。
というのも通常のLDL(悪玉)コレステロールよりもサイズが小さい小型化LDLコレステロールは、血管の壁に入り込みやすく、また長時間、血液中にとどまるため、より動脈硬化を進めやすいということが分かってきているからです。
そして実は中性脂肪がLDLを小さくするのに一役買っているみたいなんです。
また小型化LDLコレステロールが高い人には以下のような特徴があります。

ということは、バリバリのメタボの人は超悪玉コレステロールを有している可能性が高いわけですね!
以下のようなセルフチェックの方法があります。

フリードワルドの式でのLDLコレステロールの計算方法は
LDL-C = TC - HDL-C - TG/5
ですので、セルフチェックでは、中性脂肪の影響を無視した計算式ということですね。
(なんでこの計算式なのか疑問だ・・)
また自費(保険適用外)ですが、血液検査で調べる方法もあります。
https://www.medience.co.jp/clinical/information/parts/pdf/22-28c.pdf
ただし小型化LDLコレステロールが高値であることがわかったところで、心血管疾患の高リスクということはわかりますが、やることは通常の高LDLコレステロール血症の患者さんと同じ治療内容になりますので、無理に調べる必要はないのかなと個人的に考えています。(よりメタボの解消が大事になるのは間違いないですが!)
今後小型化LDLコレステロールの人に特有の治療法が開発された場合や通常のLDL正常でも小型化LDL高値を検出するのが一般化した際に、測定する意義が出てくるのかなと。
ということで「小型化LDLコレステロールは超悪玉コレステロール」についてお話ししました。
~余談~
YouTubeでも「高LDLコレステロール血症の人で、中性脂肪が低い人」は「小型化コレステロールが少ないから」治療の必要がないとか解説されてます。
しかしガイドライン上は、「高LDLコレステロール血症の人で、中性脂肪が低い人」でも、普通に治療適応がありますので、主治医の先生と相談して治療方針を決められてください。
参考になれば幸いです🌈
【健診】脂質異常症の患者さんは卵をいくら食べてもいい?【結論:控えた方がよい】

こんばんは。ぼたもちです。
今日は「脂質異常症の患者さんは卵をいくら食べてもいい?」ということでお話しします。
~結論~
控えた方がよい
*目安は「一週間に1~2個まで」、「一日1個まで」など諸説あり
~解説~
諸説ありますが、参考にしているのは下記の記述です。

つまり、「コレステロール摂取量が血中コレステロール値に影響は個人差が大きい」ということで上限値が撤廃されたわけですね。
コレステロール摂取量が自分の血中コレステロール値に与える影響を推測することができないため、食事でのコレステロール制限はやっぱり必要になるわけです(*ただし脂質異常症の方に限ります。正常値の人は食事制限はありません。)
繰り返しますが、コレステロールの摂取がダイレクトに血中コレステロール値に影響を与える人もいるし、そうでない人もいるということです。
ということで、脂質異常症の患者さんは卵をいくら食べてもいい?ということでお話ししました。
ただし、食事制限で下げられるコレステロール値はLDL-C 10mg/dL程度という報告もあり、現実にはお薬を追加することが多いです。
参考になれば幸いです🌈
【健診アプローチ】コレステロール【LDL-C≧160もしくは180、TG≧150、HDL<30で要精査】

こんにちは。ぼたもちです。
今日は「コレステロール」についてお話しします。
早速結論です。
結論
要精査対象
LDL-C≧160もしくは180、TG≧150(空腹時採血)(随時採血なら≧175)
LDL-C≧120(境界域高LDL-C血症)→生活指導
HDLは30未満で要精査、30~39は経過観察(2024年改定)
要精査対象が「LDL-C≧160もしくは180」の理由
人間ドック学会の判定基準ではLDL-C≧180で要精査
ガイドラインでは治療開始基準の記載なし
二次予防・高リスク患者では、厳しめの目標値が設定されているが、あくまで治療開始基準ではない
臨床では160もしくは180以上から治療介入されるケースが多い印象
ただし所属する健診施設が140以上で要精査(脂質異常症の診断)であれば、それに従うこと
TGについて
TG≧150が要精査対象だが、臨床では300以上から治療介入が多い
診断基準

測定方法
LDLは「直接法」(以前より精度が上がった)、「フリードワルド式」どちらで算出してもOK
LDLは値とともに、測定法を明記した方がよい
採血条件
フリードワルド式:TC-HDL-C-TG/5、TG400未満、かつ空腹であることが条件
逆にTG400以上や食後採血の場合は、LDL-C直接法あるいはnon-HDL-Cでの評価が勧められる
~空腹時採血~
10時間以上の絶食、水やお茶などのカロリーのない水分の摂取は可、それ以外の条件だと「随時」
~食事の影響を受けるもの~
TG、フリードワルド計算式で算出するLDL-C
TGのピークは食後4時間程度
~食事の影響を受けないもの~
LDL-C直接法、TC、HDL-C
生活指導
禁煙・減量・食べ物
禁煙、BMI<25(摂取カロリー制限:摂取量(kcal)=標準体重(kg)×(25~30 デスクワーク))
*標準体重 身長×身長×22
*高度肥満者なら標準体重×20kcal
*肥満の場合は、まず3%の体重減少を目指す
*糖尿病でカロリー制限されている方は主治医に相談
飽和脂肪酸・コレステロールを過剰に摂取しない、トランス脂肪酸の摂取を控える
ヤバい食べ物:卵、肉の脂身、乳製品、マヨネーズ、スナック菓子、揚げ物、甘い清涼飲料水
食物繊維の摂取を増やす:大豆、魚、野菜、海藻、きのこ、果物、玄米、雑穀米
伝統的な『日本食』をイメージすればよい(ただし塩分を控える)
1日のコレステロール摂取量の目安は200mg、卵1個には210mg
→コレステロール高めの人は、卵を1週間に1~2個程度にとどめたにとどめた方がよい
HDLを上げる薬剤はない。禁煙・有酸素運動(1週間に180分)・減量
参考
診断後のアプローチ(主治医の範疇)
脂質異常症を診断する(LDL≧120)
二次性・家族性チェック→心疾患チェック→DM・CKD・PADチェック→リスク因子チェック
リスクに応じた生活習慣の改善・薬物治療を考慮
治療
優先すべきはLDLのコントロール
~高LDL血症~
一次予防患者:食事・運動療法→3~6ヶ月程度の生活習慣改善を行ってもダメなら→薬物療法検討
二次予防患者や高リスク患者:生活習慣の改善とともに薬物療法を検討する
目標値との解離が30未満:スタンダードスタチンであるメバロチン
目標値との解離が30以上:ストロングスタチンであるクレストール・リピトール
目標値に達しない場合:スタチン小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であるゼチーア追加
~高TG血症~
治療介入についてはエビデンスがはっきりせず、諸説ある(下記は一例)
TG500以下:生活習慣の改善が重要、LDL上昇なければ薬物療法検討
TG500以上:フィブラート系やイコサペント酸エチルが選択されうる、急性膵炎のリスク上がる
実は動脈硬化性疾患予防に関して、LDL-C高値の患者に対する薬物療法(スタチンのみ)の有用性は示されているが、LDL-C以外の脂質異常の治療に関するエビデンスは明確ではない。
高TG血症は食事を摂生するだけでも、減少が期待できる(内服なしでも)
~低LDL-C血症・低TG血症~
病的意義に乏しく経過観察でOK
~LDLを下げることによる弊害はないのか?~
今現在ではっきり言えることとしては
・ACSの二次予防においてはLDL-C 70未満でイベント抑制効果がある。海外の論文ではハイリスク例では55未満まで下げることが推奨されている。
・コレステロールを下げることで心血管イベントや死亡率が有意に増加したという大規模研究はない(小規模研究はあるが)
LDL-Cを下げることによる弊害もあり得るが、可能性の話であり、現状は二次予防のためにはLDL-Cを目標値まで下げることが共通認識である。
参考になれば幸いです🌈
【健診】インフルエンザワクチン接種方法

こんばんは。ぼたもちです。
今日は「インフルエンザワクチン接種方法」についてお話しします。
健診医が接種する施設もありますよね😊
そこで、接種方法について簡単にまとめてみました。
~結論~
- 手袋不要
- 皮下注射
- 利き手じゃない方の手
- 腰に手を当てる
- 穿刺点は肩峰と肘頭を結んだラインの下1/3
- 消毒は中心から渦を描いて外側へ 10秒待って乾燥させる 生活の注意点を話す
- 皮膚をつまむ つまむ手の添え方は患者側(固定しやすいため)
- 穿刺する 角度は30度 15mm程度挿入 固定する
- つまむ手を離し、逆血確認・手先にしびれがないか確認→注入
- 穿刺方向にスッと抜去する
- アル綿で抑えて、止血テープを貼る 穿刺部は軽く押さえる程度
- もまない、こすらない
- 入浴可、過度な運動や飲酒は控える
~参考動画~
*手前側からつまんでいるが、私は患者側からつまむ。(*固定しやすいので)
この動画のシリンジの持ち方が一番安定する。(*個人的な見解です)
持ち方以外はこの動画を遵守する形でOK
~解説~
手袋不要(WHO/米国CDCも同様の見解、血管刺入と異なり観血的手技でないため)
消毒は中心から渦を描いて外側へ 10秒待って乾燥させる 話術が必要
皮下注射
利き手じゃない方の手
腰に手を当てる
穿刺点は肩峰と肘頭を結んだラインの下1/3
(橈骨神経・腋窩神経を穿刺しないように)
角度は日本は15~30度、米国CDCは45度
皮下をつまむ手の添え方は術者側(針刺し事故防止)か、患者側の2パターンある
針は23~26G 針の長さは13mm~32mmまで様々
30度の角度で挿入する場合、15mm挿入が必要(皮下まで4mm以上の深さがあるため)
穿刺後はつまみを解除した上で薬剤を投与する つまり皮膚をつまむのは穿刺まで。
逆血確認(逆血確認は痛みを増強するため不要という説あり)
手先のしびれの有無確認
抜去時は穿刺方向にスッと抜くと、痛みが少ない
穿刺後はアル綿で抑えて、止血テープを貼る、穿刺部は軽く押さえる程度
もまない、こすらない
入浴可、過度な運動や飲酒は控える
参考になれば幸いです🌈
【健診】V1-2誘導のQSパターン【リスクない若年者では基本精査不要、リスクある高齢者では要精査】

こんばんは。ぼたもちです。
今日は「V1-2誘導のQSパターン」についてお話しします。
心電図で、V1-2誘導のQSパターンってまあまあの頻度で遭遇するんですよね。
しかも、自動解析のコメントには「前壁中隔梗塞の疑い」と書かれている。
健診医としてどう対処すべきか、毎回悩ましい。。
ということでまとめてみました。
~結論~
症状や既往歴のない若年者では精査不要(*ただし新たに出現している場合は要精査)
動脈硬化の危険因子を多く有している高齢者では要精査→循環器で心エコー
V1の単誘導だけなら精査不要
~解説~

痩せ型・漏斗胸でも見られる。
漏斗胸:胸郭の変形により左方に偏位
→心臓がV1誘導の電極から遠ざかる
→V1誘導がaVR誘導と同じ向きから心臓を見る形になる
→つまりaVR誘導と波形が似る(時計回転にもなる)
参考URL(漏斗胸と心電図)
